キャッシュレスで先行く中国の落とし穴
中国は、全国民レベルで急速にキャッシュレス化が普及しているが、そこにはやはり落とし穴がつきまとうというお話。
新年の足音が近づいてきたが、中国で春節(旧正月)前に猛威を振るうのがスリだ。彼らも帰省して豪勢な新年を迎えるために、戦果を求めて慌ただしい雑踏で獲物をつけ狙う。
ところが、この“負の風物詩”に異変が起きている。モバイル決済が急速に普及し、財布や現金を持ち歩く人が減っているためだ。以前は背中のリュックサックから財布などを盗まれるのを恐れて、反対のお腹側にかけて出歩くスタイルが主流だったが、最近はかなり少なくなった。
人々が財布を持ち歩かなくなった分、ターゲットになっているのが携帯電話。鉄道や駅構内での事件などを処理する北京鉄路運輸法院(裁判所)によると、2017年に携帯電話を盗まれた被害件数は前年比で倍増したという。盗難品をさばく闇のルートがあり中古市場に流れている。
先日、北京の空港の売店でモバイル決済装置が故障したらしく買い物を諦めるお客が多数いたという事故があった。これはもはや中国では常態化しているようです。出張や旅行など飛行機で遠出する際にも小銭すら持っていないわけだ。いまさらながらキャッシュレス化の徹底ぶりを実感した。
ただ便利さには落とし穴があるのも世の常。生活の大部分を依存する携帯電話を盗まれたときの絶望感と無力感は計り知れない。